児童文学作家 新美南吉
今、あすをりなすの会では、期間限定で朗読劇を配信中です。(配信終了致しました。)
今回はその作品、「手ぶくろを買いに」の作者である新美南吉(にいみ なんきち)を紹介します。
新美南吉は1913年(大正2年)7月に愛知県知多郡半田町(現在の半田市)に生まれました。
14歳の頃には童謡や童話を作り、17歳から当時の代表的児童文学誌「赤い鳥」に投稿。代表作の「ごんぎつね」(原題「権狐」)はその頃の作品です。
その後、東京外国語学校(現・東京外国語大学)を卒業したのち東京で就職するも、体調を崩して帰郷します。
やがて小康を得て教員として勤める傍ら文学活動も再開し、南吉の生涯でもっとも安定し充実の日々を送り、童話や詩を精力的に創作していました。
しかし残念ながら作家としての成功を前に、1943年(昭和18年)に結核のため29歳の若さでこの世を去ります。
短い生涯でしたが文学への情熱は深く、童話や小説、詩、童謡など1500を超える作品を後世に残しました。
4歳で母を亡くし南吉自身も病弱だったことから、生きていくことの孤独や他者と心をつなげたいという心情、心の交流を表現した作品が多いのも頷けます。
「おじいさんのランプ(原題:おぢいさんのランプ)」は1953年(昭和28年)、そして「手ぶくろを買いに(原題:手袋を買ひに)」は翌年に国語の教科書に掲載されています。
「ごんぎつね」は1956年(昭和31年)に小学4年生の国語の教科書に初採用されてから実に60年以上が経ちますが今もなお使われ、多くの人に愛され続けています。
杉並和泉学園小学部では朝の授業前に「和泉おはなしの会」のボランティアが、新美南吉の作品を昨年度までに
「あかいろうそく」
「でんでんむしのかなしみ」
「あめだま」
「うまやのそばのなたね」
などを読み聞かせしています。
※タイトルは、青空文庫へリンクしています。
新美南吉は中学生の頃から日記を書き続けていました。その中から当時15歳の日記を紹介します。
「余の作品は、余の天性、性質と大きな理想を含んでいる。
だから、これから多くの歴史が展開されて行って、今から何百何千年後でも、若し余の作品が、認められるなら、余は其処に再び生きる事が出来る。此の点に於て、余は実に幸福と云える。」(1929年(昭和4年)3月2日)
作品はどこか侘しさやもの悲しい雰囲気を読者に与えながらも、あふれる優しさや愛情、そしてユーモアは、時を経た今でも温かく私たちを包み込んでくれます。
戦前で約80年も前の童話ですが、書かれた物語は子どもたちのものだけではなく、現代の大人が読んでも楽しめ、また考えさせられる作品ばかりです。
なお、愛知県半田市に新美南吉記念館があります。
新美南吉記念館
館内には常設展示室や図書閲覧室などが設けられ、自筆原稿や日記、手紙、資料などが展示され、新美南吉の文学の世界観がそこに存在します。
新美南吉の文学の一端にふれる機会になれば幸いです。
朗読劇「手ぶくろを買いに」
2020年11月29日(日)~2020年12月5日(土)まで期間限定で配信